どうも株式会社x gardenの村長兼CEOの松谷です。
ゆる〜い記事ですが、今日はメルカリ先生の企業文化の正しさをアリで立証してみたいと思います。
メルカリは企業文化の浸透させ方などのHowは各所で語られていますが、
「何故あの3つなのか?」
という問いはあまり見た事がありませんので、今日は何故あの3つが正しいのか?という事を生物学と複雑系科学の観点からゆるく書いてみたいと思います。
生物学的に最も成功しているアリ。
(急なうんちくトークで恐縮ですが)生物学ではその種の繁栄の指標を「総体数」×「個体重量」=総重量(バイオマス)で測るのですが、アリのバイオマスは自然界でダントツの1位と言われており、次いで人間が君臨しています。
(※アリのバイオマスは人間の数十倍らしい)
何故、アリは変化の著しい自然界で繁栄しつづけているのか?
その強さの秘密を紐解くと、「変化への適応力が高い共同体を、本能的に作り出している」というのが生物学術上の見解です。
これはどういうことか…、詳しくみてみましょう。
環境変化に適応する”創発”
アリの持つこの適応力は「創発」という集団行動が背景にあります。
創発とは、簡単に言うと自律的な”個”が組織化することにより、個々の能力の累計を凌駕するシステムを作り出す集団現象です。
アリの世界では”アリ塚”というコロニーを中心に、時に数万を超えるアリ達が、徹底的に統制された分業社会を構成しています。
- 食べ物を運ぶ運搬アリ
- 巣のメンテナンスをするアリ
- 敵と戦う軍隊アリ
- 食べ物を貯蔵するアリ
など様々な役割を担う個体が、誰が統制する訳でもなく職務を全うし、1つの生命体のように社会を営んでいるわけですが、、
これほど高度に分業化し、気候変動や外敵による組織損傷などの変化にも適応し続けているている生物はアリの他には存在せず、まさに見えざえる集団知性によって種を永存させ続けているわけです。
環境変化への適応力を生み出す2つの条件
そしてここからが本題ですが、この複雑系学者のベンジャミン・リキテンシュタインは、複雑系(構成要素同士が相互に影響性を持つ構造。自然界や経済界が代表例)において下記の2つの要素を備えた集団は極めて高い適応力を持つという結論を出しているのですが、これがもうメルカリのコアバリューにすごく近いんですよね。
その要素とは
- 組織のメンバー(個)が変化に強いこと。
- 個の共同体への貢献性が高いこと。
の2つです。
この2つをメルカリのコアバリューで言い換えると…
1つ目は皆さんご存知、Go Bald。前例にないチャレンジや実験を奨励する文化により結果的に変化を生み出し続けています。
2つ目はもちろんOne For All(共同体への貢献)です。
ベンジャミンは創発においてBe professional(規律性)こそ条件として挙げませんでしたが、アリの世界では共同体のために軍隊アリが捨て身で戦う事はザラであり、軍隊アリが敵に食われた場合、誰が指示する訳でもなく既存の集団の中から軍隊アリへのジョブチェンジ(①の変化への個の適応)が行われます。
アリの世界において(自我の有無は定かではないですが)組織の規律遵守は自己犠牲レベルで徹底されており、その姿勢はまさにプロフェッショナルと言えるのではないでしょうか。
また、アリはフェロモンという情報共有手段を通じて種への危険や餌の場所など、組織の利になることを本能的に伝達しており、共同体への貢献性が高いことでも知られています。
生物学と経営学を繋ぐ社会心理学
さて、生物学における「種の強さ」の背景を言語化することは出来ました。
しかしこの法則をそのまま経営に活かそうとしても、人間には「心」の問題がありますから、当然うまくいきません。
生物学の学びを経営に生かすためには、その橋渡しとして心理学や社会学を考慮する必要があります。
人間の場合「変化への適応力・しなやかさ」は個体差がある
人間の場合、柔軟さや変化への適応力は個々によって異なります。
そして発達心理学が実証してきたように「変化への適応力が無い人」のマインドアップデートは時間と労力がかかり過ぎるという現実があります。(「人と組織はなぜ変われないのか」参照)
人の意識を変えるためには意図的に「組織の崩壊を経験させる」といった”適度な葛藤・失敗体験”を作り出す必要がある訳ですが、その実現コストを考えるとあまり現実的ではありません。
言い換えると、採用の入り口で資質レベルでの「変化へのしなやかさ」を見る必要があるということですが、まさに曽山さんがサイバーエージェントの採用基準は「素直なやつ」とこの記事でおっしゃられています。
事業環境が目まぐるしく変わるサイバーエージェントの経営コンテキストから言えば、この採用基準は極めて合理的な考え方です。
「共同体への貢献性」は生物的本能を超越した心理メカニズム
また、共同体への貢献という文脈においても、前提として人は自分の利を追求するように遺伝子レベルのプログラミングされているので「チームプレイヤーであれ」と精神論で伝えても簡単にはいきません。(利己的遺伝子論)
(これは善悪の話ではなく、「生存と繁殖」を目的としてきた生物進化の過程を考えれば自然な事です)
そのため組織運営においては、「組織への貢献」というコアバリューを守った人に賞賛を惜しみなく伝える事でその人のモチベーションの根源を、金や権力といった「外発的(生物的)」なものから、「内発的(精神的)」なものへとアップデートし、マズローの6段階目の最終段階である「自己超越の欲求」まで昇華させる必要があるのです。
異なる学術間に存在する法則性を経営に活かす。
ここまでごちゃごちゃ書いてきましたがこの記事で一貫して言いたいのは自然界の法則性は、経営の文脈にも(頑張れば)応用・再現しうるという事です。
以前読んだ孫正義 -300年王国の野望に「会議中に話は広がり、生物学を話まで及んだ」という一説があり、当時は意味が分からずに読み飛ばしていましたが、最近になって孫さんは、生物学と自然界における勝者の法則性から意思決定のヒントを見出そうとしていたのではないかなとも思えます。
今回はアリを題材に自然界における勝者の法則を論じましたが、資本主義も企業同士の自然淘汰・弱肉強食の繰り返しで発展してきた社会の枠組みであり、様相は自然界そのものです。
経済学の古典「資本論」を書いたマルクスは、時同じくして出版された「種の起源」の筆者、ダーウィンに本を贈呈し、手紙も書いています。
マルクスは資本主義と自然界との共通性を見出していたのでしょう。
「自然界で成功したアリの強さを言語化すると、メルカリの3つのコアバリューに収斂していく」というのが今回のお話でしたが、
IT産業などのように、変化が激し過ぎる環境に適応していかなければならない我々としても、上記で述べた
①、個体レベルでの変化への適応力
②、メンバーの共同体への貢献性
という2つを企業文化に宿す事が、偉大な組織を創るうえで重要なミッションになると思っています。
取り留めない駄文を重ねてきましたが、今後も情報を収集し、整理して、法則性を見出したり知を構造化することで、健全な組織運営に活かして参りたいと思います。
おしまい。